医師の労働環境

誤解を恐れずに言えば医師の労働環境は‘劣悪’に等しい状況と言えるでしょう。

特に病院に勤務する勤務医においては、1週間当たりの労働時間は平均して61〜66時間となっており、労働基準法に規定されている週40時間を大幅に上回っています。また当直においても労働基準法では日直については月1回、宿直については週1回を限度とすると定めるも、4人に1人は月に4回以上の宿日直を行い、中には週に2〜3回の当直を強いられている場合もあります。さらに当直明けは休みを取ることを推進するも、当直明けも連続して通常勤務を行うことが慣例、常態化しており、多くの勤務医の職務は深夜勤務を含む拘束時間の長い勤務となっているのです。徹夜の当直明けに取る休み‘ディーンスト・フライ’の意味さえ知らない医師もいるのです。

絶対にミスや間違いのあってはならない現場において、精神的緊張を常に求められる職務を考えれば、医師の心身的負担がどれだけのものであるか想像にかたくありません。こうした医師の労働環境の実態は、業務上疾病の認定基準である「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」の認定要件に抵触するレベルと言われています。また2005年に米国医師会雑誌に掲載された論文では、週80〜90時間勤務で夜間のオンコールがある医師の集中力・判断力などの能力は、週44時間勤務の医師が飲酒した状態と同じレベルにあると指摘しています。

このような医師の長時間にわたる過重労働、心身的負担、睡眠・休息時間の欠如は、医師自身の健康影響はもとより、職務遂行能力の低下や医療事故の誘因を高めるリスクがあり、過酷な労働環境を離れ開業医への転身を促します。最悪のシナリオでは医師の突然死・過労死・自殺にまで追い詰めているのです。その結果、医師不足と過重労働の悪循環が生まれ、安全で質の高い医療提供を困難にしていると言えます。

さらに医師を苦しめているのが医療訴訟です。近年は人々の権利意識の高まりから医師・医療に対するクレームをはじめ、様々なケースが医療訴訟へと発展してしまっています。医療従事者側のミスや不備で後遺症や死亡事故が起きたことがあることは否めません。しかし一方では、妊娠しても出産まで一度も病院を受診しない妊婦さん、夜間の方が空いているからと救急外来を利用する親御さんなど患者さん側のモラル低下が医師たちを疲弊させる原因となっている事実もあるのです。そのため医師たちは自己防衛に入り高度医療には手を出さない、救急患者の搬送は拒否、ICUの機能がもはや果たされない病院も存在する事態を招いているのです。

医師の労働環境は医療の質そのものを大きく左右するものであることが分かります。

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